スケーリングとは、人の歯医者さんでも一般的に実施される歯石取りのことです。
わんちゃんに「お口を開けていて下さい」とお願いすることはできないので、必ず全身麻酔下で実施します。

スケーリングの流れ

①スケーリング歯石取り

付着している歯石を超音波振動によって除去していきます。
この際にグラつきが大きい歯があった場合、再び歯を固定することは困難であり、
残した場合に痛みや化膿が生じる可能性が高いことから、基本的に抜歯対応致します。

②歯周ポケットの清掃と研磨

回転ブラシによって歯周ポケット内の汚れを掻き出すのと同時に、
スケーリングの過程で生じる小さな削り跡を平らに磨いていきます。

③更に細かい研磨

研磨機によって歯を1本1本丁寧に磨き上げることで、歯の表面の凹凸をなくしてツルツルに仕上げます。
この過程により、新たな歯垢が付着しにくくなり、歯石の再発を遅らせることができます。

スケーリングのメリット

物理的に歯石を除去できるので、口臭の改善や、その後のホームデンタルケアが実施しやすくなることが期待できます。
歯周病の予防、治療にもなるので、基本的に全てのわんちゃんで定期的に実施させて頂きたい処置になります。
また、グラつく歯があって痛みを生じていたり、歯石が多く付着して噛み合わせに影響が出ている場合などは、スケーリングを実施することで口の痛みや不快感から開放されるため、生活の質が向上します。

年齢のことや治療中の持病がある場合は麻酔処置は難しい?

加齢や、心臓病、腎臓病などの治療中の疾患を持っている場合、確かに麻酔のリスクが増加する場合があります。
ただし、歯石の付着が重度であったり、歯周病の進行が重度の場合はぜひ、スケーリングの実施を検討して下さい。
加齢や持病のある場合で、食欲が低下している場合、口内環境を改善することで食欲が改善することがあります。また近年、歯周病菌が血液を巡って心臓病や腎臓病などを悪化させる可能性が示唆されているため、積極的に実施する価値が高い処置だと考えています。
スケーリング実施をご希望の場合、各種検査を通して麻酔リスクを判定し、実施の可否についてはオーナー様とご相談の上、決定させて頂きます。ぜひお気軽に当院にご相談下さい。

全身麻酔下でなくてもできるのでは?

歯石取り→歯周ポケットの清掃→研磨この流れを一本一本の歯で実施していくため、比較的時間のかかる処置になります。
また、口には痛みを感じる神経が多く敏感なので、意識下での処置は過度の痛みや恐怖を与えるリスクが高く、その後のホームデンタルケアに支障をきたす可能性があることから、当院では麻酔下でのみスケーリングを実施しています。
歯の表面の歯石を除去すれば、口臭の改善は期待できます。
ただし、スケーリングの主目的である歯周病の予防、治療の観点において重要なのは歯周ポケットです。
歯周病が進行すればするほど歯周ポケットは深くなるため、より念入りに歯周ポケット内の歯石や菌を除去する必要があります。
その後に歯を研磨することの重要性も含めて、これらの処置は意識下では実施不可能であり、麻酔下で実施することで最大の治療効果を発揮します。

 海外の研究で、「年一回の麻酔下スケーリングで死亡リスクが優位に低下した」との報告があります。海外では定期的な麻酔下スケーリングが一般的になっているようです。当院でも、必要なタイミングでの定期的なスケーリングは麻酔のリスクを上回るメリットがあると考えています。
ただ、もちろんこの報告のように全てのわんちゃんに年一回のスケーリングを強要する訳ではありません。ご自宅でのホームデンタルケアがある程度可能で、歯肉の状態が悪くなければスケーリングの間隔を開けることができます。反対にホームデンタルケアが難しい場合や、体質等により歯周病が進行しやすい場合には、やはり定期的にスケーリングを実施した方がシニア期になってもなるべく多くの歯を残すことができますし、生活の質も維持できると考えております。
歯石はあまり付着していないけれども、歯周病が進行していないか確認したい場合には、口内を拭き取るだけで歯周病の進行度合いを判定できる検査もございます。
それぞれのわんちゃんによってスケーリングを実施するタイミングや、実施する頻度は変わってきますので、詳しくは当院までご相談下さい♪